プロローグ

 事の始まりは約1年前、カナダのカミキリムシコレクターのロバートさんと虫の交
換をはじめた時にさかのぼる。彼から送ってもらったクワガタの中に長年憧れていた
エラフスミヤマクワガタのメスが含まれていた。採集データを見るとアメリカ、ヴァ
ージニア州で氏によって採集 されたものであった。氏は毎年ヴァージニアへカミキリ
ムシの採集に行っているらしく、E-Mailをやりとりするうち今年彼の採集に同行させ
てもらえる事になった。

 最初のヴァージニア行きは6月下旬でクワガタを目的に行った私にはひどい結果だ
った。エラフスのオスにはじめて会えたが、それはロバートさんが採集したものをプ
レゼントしてくれたもので、自分の手で採集する事はできなかった。


その時の♂

その時見れたエラフスはその一匹のみ。自分自身では採集できずガックリ肩を落とし
てヴァージニアを後にした。
 カリフォルニアに帰り、いろいろ反省してみたがこのクワガタについて考えている
うちに どうしても自分で採集したくなった。駄目もとでロバートさんをもう一度誘っ
てみると一週間だけなら仕事を休めると言う。前回いろいろな採集法を試してもサッ
パリ採れなかった事から、エラフス採集に自信はなかったが、ティティウスシロカ
ブトは採集できるのでは、と思いもう一度ヴァージニアを訪れる事になった。

7月26日(初日)
飛行機がボルチモア空港に到着したのが午後6時ごろ。まだ外は明るい。旅費を削る
ために格安チケットを頼んだらメリーランド州からヴァージニアまで3時間近く運転す
るはめになった。 早速レンタカーを借り、ヴァージニア州を目指す。今回ロバートさ
んと会うのはヴァージニア州内部にある前回採集を試みた州立公園だ。ここで氏は私
が来るまで灯火採集をしていると言う。ポイントは前回二人でエレファスを探した
場所だからすぐに分かるはずだ。途中マクドナルドで食事をすませ、彼のいる州立公
園にたどり着いたのは真夜中であった。

ロバートさんの事だからたくさん虫を採集しているだろう、と思ったが期待に反して
採集結果はよろしくない。エラフスはゼロ。前回多数採れたツヤハダクワガタの一種
すら1頭も採れていない。採れる虫も前回来た時と一緒だし、数も前回より少ないと
いう事で明日は別の場所に移ろう、という事を決め寝る。荷物を減らそうと寝袋を持
ってこなかったのがまずかった。
夜中寒くて何度も目を覚まし、明け方まで暖房をきかせた車で寝た。