7月27日 (二日目)
朝早く目が覚めたようなすがすがしい気がしたが、時計を見るとなんと10時であ
る。予定では8時には出発するはずだったのに。朝食をほおばると一路ヴァージニア州
の南東部にあるチェサピークの町を目指す。かなり飛ばしていったにも関わらずチェ
サピークに着いたのは午後2時をまわっている。この町のはずれにある公園が今回採集
を行った場所である。ロバートさんの友人が何年か前ティティウスシロカブトを何十
匹も採集したポイントから数マイルと離れていない場所である。この時点でエラフス
の事はほとんど頭にはなかった。もう今年は無理だろう、とあきらめ狙いをシロカブ
トに移していた。


キャンプ場の様子

公園に着いてみて問題が出てきた。ここの公園はチェサピークの町の管轄になってい
て、 町役場に行って採集許可を取らないと、採集させられないとレンジャー達が言
う。ロバートさんが 持っている州発行の採集許可書では駄目だそうだ。ここのレンジ
ャーの隊長は腰にピストルをぶら提げ、しかも全然ニコリともしない人だったので結
構恐かった。町役場に行くと初老のおばさんが にこにこしながら出てきて、採集許可
を出してくれた。 公園に戻りレンジャーから公園内の林道の説明をまず受ける。ここ
にはガラガラヘビをはじめ3種類もの毒蛇がいるそうで、林道を歩くときは足元を良く
見るように、と注意を促される。元来ヘビほど嫌いなものはない私にとっては3種も毒
蛇がいると聞きショックを受ける。幸い今回の採集行きではヘビにお目にかかる事は
なかったが森の中で会った家族連れはガラガラヘビを見たそうで注意してくれた。


ポイント周辺の様子

やっと採集をはじめる事が出来たのはもうすでに5時過ぎである。早速林道を歩いてま
わる。ロバートさんはカミキリ専門なので半分死にかかったような木を念入りに見て
回っている。林道を歩いているうちに直径60センチほどの朽ち木が目に入る。ロバートさんの手を借りて二人でその朽ち木を起こしてみると、なんと倒木の下にミヤマク
ワガタのメスが潜んでいた。最初の朽ち木でいきなりミヤマクワガタを採集できた。
こうもあっさり採集できると、前回の苦労は何だったのだろう?という疑問が湧き起
こる。このメスはもしやエラフスではなく、別の種ではないのかとの疑いも出てくる。オスが採れるまで素直に喜べない。その朽ち木を崩してみると、ボロボロと小さ
な幼虫がでてくる。おお、ミヤマの初令の幼虫ではないか!(カリフォルニアに帰
り、この幼虫を飼育してみると意外なことが判明。これはミヤマの若令幼虫ではなく
ルリ属の終令幼虫であった)こうなってくると、今度はシロカブトの事は忘れ本命の
ミヤマクワガタを探すのに躍起になってくる。この日はキャンプ場の近くで朽ち木を
起こしてまわり、2頭のミヤマクワガタのメスを採集できた。そのあたりにバナナトラ
ップもセットしてみる。夜が非常に楽しみだ。

7時を回りあたりもだんだん暗くなってきたので、灯火採集のセットをはじめる。私は
ブラックライト1本持参してきたが、ロバートさんは気合をいれて4本も持ってきてい
る。 早速キャンプ場内に3本、林道の中に2本ライトをセットして日が暮れるのを待
つ。近くでキャンプしていた人達は何をやっているのだろう、と聞いてくる。8時を
過ぎるころからポツポツと蛾が 集まり始める。まず甲虫で多かったのがコガネムシの
仲間である。あまり興味ないので無視。 次にカミキリムシなどが飛んでくる。ロバー
トさんが丹念に集めている。普通種はいらないとのことなので私が頂戴する。キャン
プ場にあるトイレのライトを見に行くと、ミヤマのメスが来ている。ここでメス2匹
を追加する。おいおい、オスはどこなんだ? 公園の外のガソリンスタンドにもよさそうな水銀灯があったので、ロバートさんと行ってみた。 おびただしい数の蛾に混り、
ハナムグリの一種、地元ではJune Beetleと呼ばれているものを採集できた。緑の地
にオレンジの 縁があるなかなかきれいな種である。ロバートさんによると普通種だそ
うである。またキャンプ場にもどると、私の設置したライトにティティウスシロカブ
トのオスが来ていた。はじめて御目にかかる生きたティティウスのオスだ。グラント
シロカブトほど大きな角はないが、なかなかのものである。バナナトラップは全く効
果がなく、来ていたのは蛾とアリだけであった。その晩は3時まで粘ったが他にめぼし
い物は採集できなかった。